後遺障害・後遺症

適正な後遺障害認定の獲得をめざす!必要な知識のまとめ
「後遺障害」とは、交通事故によるけがの治療を継続して、これ以上の改善が見込めない状態で、身体に障害が残った状態をいいます。自賠責保険では、後遺障害と認定されると、「等級に応じて」保険金が支払われます。症状に見合った保険金を得るためには、適正な後遺障害の等級認定を受けることが重要です。そこで、後遺障害認定の手続きの流れとポイントをご紹介します。
慰謝料の額を左右する!後遺障害認定の重要性後遺障害が残ってしまった場合、これに対する損害賠償を求めることができます。損害賠償は、本来加害者が被害者に支払うものですが、加害者が保険に加入している場合は、加害者が支払うべき賠償金を保険会社が代わりに支払います。
後遺障害による損害賠償の主なものには、慰謝料と逸失利益があります。慰謝料とは、精神的損害に対する損害賠償のことです。また、逸失利益とは、交通事故による後遺障害が原因で、将来得られるはずであった収入が得られなくなったことによる損害のことです。
ところで、保険会社に保険金を請求するには、損害がいくらかという金額を示さなければなりません。しかし、損害を金銭的に評価することは中々難しい問題です。
例えば、同じ交通事故による損害でも、「接触事故でドアを破損した」という物的損害の場合は、修理費用を損害額と考えることができるので、損害の金銭的評価は比較的簡単です。しかし、慰謝料の場合、精神的苦痛は目に見えないものですから、金額に表すことは困難です。また、逸失利益の場合も、将来得られるはずであった収入を現時点で正確に計算することは困難です。
また、交通事故は多発しており、すべての事案について個別に慰謝料や逸失利益の金額を算定していると、事務処理に膨大な時間と手間を必要とし、迅速な事件の処理が不可能になってしまいます。
そこで、現在の実務では、下記の表のように、障害が残った部位、障害の内容・程度に応じて等級を定め、被害者ごとにこの表のどれに当てはまるか認定し、その認定に応じて損害額を算定するという扱いになっています。
このため、症状に見合った保険金を獲得するためには、適正な後遺障害の等級認定を受けることが何より重要となるのです。
等級 | 介護を要する後遺障害 | 保険金(共済金)額 |
---|---|---|
第一級 |
|
4,000万円 |
第二級 |
|
3,000万円 |
等級 | 後遺障害 | 保険金(共済金)額 |
---|---|---|
第一級 |
|
3,000万円 |
第二級 |
|
2,590万円 |
第三級 |
|
2,219万円 |
第四級 |
|
1,889万円 |
第五級 |
|
1,574万円 |
第六級 |
|
1,296万円 |
第七級 |
|
1,051万円 |
第八級 |
|
819万円 |
第九級 |
|
616万円 |
第十級 |
|
461万円 |
第十一級 |
|
331万円 |
第十二級 |
|
224万円 |
第十三級 |
|
139万円 |
第十四級 |
|
75万円 |
- 視力の測定は、万国式試視力表による。屈折異状のあるものについては、矯正視力について測定する。
後遺障害の等級認定は、自賠責保険会社が行います。認定を求める手続については、被害者が自分で加害者の自賠責保険会社に申請する「被害者請求」と、加害者側の任意保険会社が手続を行う「事前認定」があります。
被害者請求の手続の流れ
(1)症状固定後、医師に後遺障害診断書を書いてもらう。症状固定に至るまでの期間は、けがの部位・程度により異なります。また、個人差もあります。一般的には、事故後6カ月程度で症状固定と判断されるケースが多いといわれています。
症状固定の判断は、主治医が行います。診断書の作成を主治医に依頼する際は、何をどう書いて欲しいのかをきちんと伝えるようにしましょう。症状が医学的にきちんと説明されていること、自覚症状の内容、後遺症に至ったプロセスが書かれていることなどが必要です。
ケースにより異なりますが、おおよそ次のような書類が必要になります。
- 交通事故証明書
- 支払い請求書兼支払い指図書(実印を押します
- 事故状況説明図
- 被害者の印鑑証明書
- 診断書と診療報酬明細書
- 後遺障害診断書
これらの書類を加害者の自賠責保険会社に送付し、申立てを行います。加害者が加入している保険会社は、加害者の保険証券や車検証、交通事故証明書を見ればわかります。
(3)自賠責保険会社が調査事務所に対して後遺障害等級の調査を依頼する。調査事務所とは、保険会社とは別組織の損害保険料率算出機構という機関が設置している事務所です。調査事務所は事故の状況をもとに、事故とケガの因果関係の有無や損害額について中立な立場から調査し、その結果を保険会社に報告します。保険会社はこの調査報告をもとに後遺障害の等級認定を行うため、実質的な等級認定は調査事務所が行っているといえます。
(4)調査事務所で調査が行われ、結果が自賠責保険会社に通知される。調査の段階で、調査事務所から追加の資料の提出を求められる場合もあります。
(5)自賠責保険会社から被害者へ認定結果が通知される。事前認定の手続きの流れ
流れとしては被害者請求と同じですが、手続きは相手方の任意保険会社がすべて行います。被害者が自分で申請書類を整える必要はありません。認定結果は、調査事務所から相手方の任意保険会社に通知されます。
被害者請求と事前認定の違い
どちらも、同じ書類に基づいて調査事務所が判断をするので、結果に大きな差はないといわれています。
ただ、事前認定の場合、被害者の中には、加害者の保険会社に手続きを任せることに対して不安感を感じる方もいらっしゃるようです。ご自身で確認しながら手続きを進めたいという方には、被害者請求をおすすめします。
また、事前認定の場合は、後遺障害の等級認定手続きが終わった段階では保険金の支払いを受けることができず、傷害部分などすべての損害に対して示談が終わった後で保険金が支払われます。これに対して、被害者請求の場合、等級が認定された時点で、自賠責保険から保険金の支払いを受けることができるというメリットがあります。
後遺障害の等級認定の申立てを行っても、非該当と判断されたり、予想していたよりも低い等級で認定されたりすることがあります。このように、認定結果に納得がいかない場合には、異議申立てをすることができます。
自賠責保険会社に対して異議申立てを行う
異議申立書に新たな医学的証拠(追加診断書、医療照会に対する回答書、医師の意見書、写真等)を添えて、保険会社に対して申立てを行います。異議申立ての方法には、等級認定の申立てと同様に、被害者が自分で加害者の自賠責保険会社に申請する「被害者請求」と、加害者側の任意保険会社が手続を行う「事前認定」の2種類があります。異議申立てを行うと、第三者機関である「損害保険料率算出機構」の地区本部が再審査を行います。
自賠責紛争処理機構の調停制度を利用する
自賠責紛争処理機構は、民間の裁判外紛争処理機関で、専門的な知見を有する公正中立な弁護士、医師などで構成される紛争処理委員会が審査を行います。申立書には、紛争の問題点、交渉の経過の概要及び請求の内容を記載します。被害者から提出された申立書やその他の資料、保険会社から提出された資料、自賠責紛争処理機構が独自に収集した資料に基づいて書面審査が行われます。調停の結果は各当事者に通知されます。
訴訟を提起する
保険会社に対する異議申立てや自賠責紛争処理機構の調停制度が功を奏さない場合、裁判所に訴訟を提起して、後遺障害の認定を求めることができます。裁判所は、当事者双方から提出された証拠をもとに、判決を言い渡します。判決までいかずに、和解で終了する場合もあります。
訴訟の難点は、解決までに時間がかかることです。1年や2年を要することは珍しくありません。また、判決に不服がある当事者が上訴(上級の裁判所に対して不服申立てを行うこと)をすれば、さらに時間がかかります。
後遺障害の等級認定や異議申立ての手続きは、書面に基づいて行われるため、必要書類を正しく整えることがポイントになってきます。中でも、症状を説明するための医学的証拠は特に重要であり、医師に後遺障害診断書の作成を依頼する際には、どのように記載をしてほしいのか、きちんと説明をする必要があります。ポイントを押さえた診断書を作成してもらうのは難しいところもありますので、交通事故を得意とする弁護士などの専門家にアドバイスを求めるのもよいでしょう。
後遺障害・後遺症を得意としている弁護士
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自賠責保険等級認定後ですが、自身の損保の顧問弁護士ある弁護士変更の可否について