弁護士コラム

ASKA氏の今後の見通しについて

[投稿日] 2016年12月07日 [最終更新日] 2016年12月22日
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小川 智史 弁護士 小川智史法律事務所

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1.起訴の可能性について

 覚せい剤使用罪の成立については、客観的な使用の事実の他、故意、具体的には「覚せい剤と分かって使用した」という認識が必要とされます(刑法38条1項)。マスコミ報道の限りでは、ASKA氏は覚せい剤使用の故意について否認しているようです。

 覚せい剤使用の故意の認定に関しては、尿検査で陽性反応が出た場合、特段の事情がない限り、覚せい剤と分かって使用したという認識を肯定すべきという高裁判例があります。したがって、通常の事案では、尿検査で陽性反応が出ており、疑義が生じる事情がない場合には、覚せい剤使用の故意有として起訴する事例が多いです(事案によっては、その他の裏付け証拠についても公判で検察官が立証する例がありますが)。

 したがって、ASKA氏が覚せい剤使用の故意について否認を続けた場合であっても、尿から陽性反応が出た原因について検察官に対し合理的根拠を示さない限り、起訴される可能性が高いでしょう。

 

2.第一審公判について

 公判において、覚せい剤使用の故意の否認を継続した場合であっても、やはり尿から陽性反応が出た原因についてASKA氏が合理的根拠をもって主張立証しない限り、覚せい剤使用の故意有として有罪認定されることが予想されます。

 マスコミ報道によれば、前刑については懲役3年・執行猶予4年の判決とのことですが、執行猶予取消が見込まれる場合、再犯の分については、執行猶予取消分を加味して、単独で実刑の場合より多少短くなる例が多いです。本件では、再犯分については懲役1年半~2年程度ではないかと思います。したがって、執行猶予取消分を加算すると5年近くの実刑になる可能性があります。

 なお、主として薬物事犯における社会内での更生を目的として、判決で宣告された期間のうち一部は刑務所で服役し、残りは更生支援施設等の一般社会内での更生を図る「刑の一部執行猶予」という制度が、本年6月より施行されています(刑法27条の2)。ただ、マスコミ報道の限りでは、ASKA氏は前刑の執行猶予期間中に薬物からの更生専門施設に通院していたとのことであり、それでも再犯に及んでしまったと認められる場合には、刑の一部執行猶予も認められず、実刑判決が宣告される可能性が高いでしょう。

 また、保釈に関しては、①常習的に長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯した場合や罪証隠滅の恐れがある場合は保釈不許可事由に該当するとともに(刑事訴訟法89条3号、4号)、②被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときは保釈取消事由に該当するため(同法96条1項2号)いわゆる実刑見込事案においては、保釈の可否についてはかなり厳しく判断されます。したがって、今回の場合は保釈は認められないか、仮に認められる場合であっても前回よりもかなり高額の保釈保証金の納付が必要となる可能性が高いです。

 

3.刑の確定について

 刑の執行猶予取消に関しては、保護観察に付されていない場合には、通常は再犯についての実刑判決が確定した日が基準となります。そのため、いわゆる「猶予切れ」を狙って高裁・最高裁まで争う被告人も少なくありません。

 しかし、裁判所も当然そのような事情は分かっており、「猶予切れ」の可能性がある事案については、これを防止するため迅速な審理を行ないます。本件の場合には、猶予期間満了まで2年近くあるため、仮にASKA氏が最高裁まで争った場合であっても、「猶予切れ」にするのは難しいのではないかと思います。

 なお、同種事案において、一審で有罪・実刑判決が宣告された場合、一般論としては、高裁・最高裁で判断が覆るケースは例外的です。

 

4.まとめ

 以上より、ASKA氏が覚せい剤使用の故意の否認を継続した場合であっても、合理的な反証ができない限り、実刑判決が宣告され、相当期間の刑務所での服役を余儀なくされる可能性が高いのではないかと思います。

 ただし、あくまで私の私見にすぎず、捜査・公判段階の被疑者・被告人には「無罪推定の原則」があるとともに、検察官・裁判官の判断は上記と異なる可能性がある点に注意する必要があります。

 また、本件を離れた一般論として、逮捕段階で、マスコミ等では大きく報道され、あたかも犯人であるような印象を受けるかもしれませんが、逮捕段階では「無罪推定の原則」によりあくまで犯罪を行なった疑いがあるにすぎず、その後処分保留釈放・不起訴になる例も少なくありません。近年では逮捕段階の報道がインターネット上に残り、その後も検索で上位に表示される例も少なくありませんが、逮捕段階での情報のみで断定的な判断を行なわないようにする必要があります。

 

5.ASKA氏不起訴に関する追記(12月22日付)

 本年12月19日付で、本件に関しASKA氏が嫌疑不十分により不起訴処分となった旨、トップニュースで報道されました。

 その理由としては、ASKA氏から提出された尿とされる液体について、ASKA氏の弁解を排斥できず、公判でASKA氏自身の尿と立証することが困難である、ということのようです。

 今後検察審査会で審査が行われる可能性がないとは言えませんが(職権による審査につき検察審査会法2条3項)、東京地検としては上記の判断ということになります。

 

 当初本コラムを作成した12月7日時点では、ASKA氏から提出された尿から陽性反応が出た旨の報道が繰り返されており、かかる報道を前提に本件に関する検討を行なっておりました。

 本件に関しては、当初より無罪推定の原則への留意には言及しましたが、起訴を想定した検討を行なっており、無罪推定や予断排除の原則への配慮の重要性につき、改めて再認識した次第です。

 

 

小川 智史 弁護士

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