養子

養子縁組できる条件や養子の相続・離縁など、法律上のルールは?
子どもを授からなかった夫婦が養子をむかえるというのは、よく聞く話です。ただし、具体的な手続きや、法的効果についてはあまりピンとこないという人のほうが多いのではないでしょうか。養子縁組をするための条件や、法律上どういった効果が生じるのか、まとめました。
養子とは養子縁組とは、血のつながりではなく、当事者の意思によって親子関係を人為的に発生させることです。養子縁組により親になる人を養親、子になる人を養子といいます。
現在の民法上、養子には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。
普通養子縁組とは、養子が実親との親子関係を存続したまま、養親との親子関係をつくるという二重の親子関係となる縁組のことをいいます。普通養子縁組は、家や氏を継がせるためや、再婚相手の子どもを養育するため、さらには相続人を増やすことによって相続税を節税するためなど、様々な目的で行われます。「婿養子」という言葉をよく聞きますが、これは家を継がせる目的で、娘の夫を養子として迎えることをいいます。
特別養子縁組とは、養子が戸籍上も実親との親子関係を断ち切り、養親が養子を実子と同じ扱いにする縁組のことをいいます。これは、普通養子縁組とは異なり、子どもの養育に重点を置いた制度です。貧困や育児放棄など、実親による養育が子どもの利益とならない場合に、子どもに家庭を与えるとともに、養子を実子と変わりなく育てたいという親の心情に配慮して、昭和62年に導入された比較的新しい制度です。
普通養子縁組は、基本的には縁組をする当事者の意思の合致と、届出により成立します。これに対して、特別養子縁組は、家庭裁判所の審判を経なければなりません。以下、それぞれの養子縁組ができる条件について、詳しく説明します。
養子縁組ができる条件普通養子縁組ができる条件
普通養子縁組は、形式的には届出により成立します(民法799条、戸籍法66条)。
実質的には、養子縁組の意思が合致すること、すなわち、養親子関係を設定しようとする意思が合致することが必要です。これがなければ養子縁組は無効とされます。例えば、学区の越境入学を目的としてなされた養子縁組は無効とされています。
15歳未満の者を養子とする場合は、法定代理人が子に代わって縁組を承諾します(代諾縁組、民法797条1項)。ただし、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、法定代理人はその同意を得る必要があります(同条2項前段)。また、養子となる者の父母で親権が停止されているものがあるときも同様です(同条2項後段)。
その他にもいくつか要件があります。
- 養親は成年者でなければなりません(民法792条)。
- 尊属または年長者を養子とすることはできません(民法793条)。
- 後見人が被後見人を養子とするには家庭裁判所の許可が必要です(民法794条)。
- 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければなりません。ただし、配偶者の嫡出子を養子とする場合または配偶者がその意思を表示することができない場合はこの限りではありません(民法795条)。
- 配偶者のある者が養子縁組をするには、その配偶者の同意を得る必要があります。ただし、配偶者とともに縁組をする場合または配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りではありません(民法796条)。
- 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可が必要です。ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りではありません(民法798条)。
特別養子縁組ができる条件
特別養子縁組は、養親となる者の請求により家庭裁判所の審判によって成立します(民法817条の2)。審判の際には、次の6つの要件が満たされていることが要求されます。
- 養親となる者は、配偶者のある者で、夫婦がともに養親とならなければなりません。ただし、配偶者の嫡出子を特別養子とする場合(連れ子養子)は、この限りではありません(民法817条の3)。
- 養親は25歳以上でなければなりません。ただし、養親の一方だけが25歳未満の場合は、その者が20歳以上であれば縁組が認められます(民法817条の4)。
- 養子は、家庭裁判所に対する縁組の請求の時に、6歳未満でなければなりません。ただし、6歳になる前から引き続き養親となる者に監護されてきたときは、6歳を超えても8歳未満であれば縁組が認められます(民法817条の5)。
- 特別養子縁組の成立には、養子となる者の実父母の同意が必要です(民法817条の6)。
- 特別養子縁組は、実父母による子の監護が著しく困難または不適当であるなどの場合で、子の利益のため特に必要があると認めるときにのみ認められます(民法817条の7)。
- 養親となる者の養育能力や、養親子の相性を見るために、6か月以上の試験養育期間を経なければなりません(民法817条の8)。
戸籍の記載について
普通養子縁組の場合、「戸籍に記載されている者」の欄には、「【父】実父の氏名【母】実母の氏名【続柄】長男(長女)【養父】養父の氏名【養母】養母の氏名【続柄】養子」と記載されます。
特別養子縁組の場合は、同欄には「【父】養父の氏名【母】養母の氏名【続柄】長男(長女)」のように記載されます。養子であることが一見してわからないように記載されるのが特徴です。
養子縁組が婚姻に与える影響
民法は、直系血族または三親等内の傍系血族との間での婚姻を禁止しています(民法734条1項本文)が、養子と養方(養子からみて、養親側の親族)の傍系血族との婚姻は禁じられていません(同条1項但書)。また、養子もしくはその配偶者または養子の直系卑属もしくはその配偶者は、養親またはその直系尊属との間では、婚姻をすることができません。これは、離縁により養子縁組関係が修了した後も同様です(民法第736条)。
例えば、父親が再婚相手の子を養子とした場合、父親とその子は、婚姻をすることはできません。養子縁組を解消しても、婚姻をすることはできません。これに対して、父親の実子と、父親の養子となった再婚相手の連れ子は、婚姻をすることができます。
養子の相続権
普通養子、特別養子ともに縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します(民法809条)。したがって、養子は実子と同様に、養親の法定相続人となります。
また、普通養子は、実親との親子関係が存続しているので、実親の法定相続人でもあります。特別養子は、実親との親子関係は終了しているので、実親の法定相続人ではなくなります。
普通養子の場合
普通養子縁組の場合は、当事者の協議で離縁することができます(民法811条1項)。養子が15才未満のときは、養親と離縁後に養子の法定代理人となる者(実父母など)とが協議します。合意の上、離縁届を市区町村に提出して受理されれば、その時点で養子縁組は解消されます。
協議が整わない場合は、家庭裁判所に調停を申立てることになります。調停が不調に終わった場合は、裁判をすることになります。裁判で離縁が認められるのは、(1)悪意の遺棄(2)3年以上の生死不明(3)その他縁組を継続し難い重大な事由のいずれかに当てはまる場合で、これらの離縁事由があれば相手方の同意がなくても離縁することができます(民法814条)。
特別養子の場合
特別養子縁組の場合は、当事者の合意のみで離縁することは認められていません。(1)養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること(2)実父母が相当の監護をすることができることという2要件に該当し、養子の利益のために特に必要であると認められる場合にのみ、家庭裁判所の審判によって離縁が認められます(民法817条の10)。
審判により特別養子縁組の離縁が認められると、離縁の日から、特別養子であった子と実父母及びその血族との間の親族関係が復活します(民法817条の11)。
実の子として育てたい人、相続対策という人、どんな形であれ、養子縁組という法律行為をすれば、必ず法的効果(責任)が伴ってきます。養子縁組は様々な目的で行われますが、目的にばかり注意を向けていて、責任にまで気がまわらなかったということがないように、しっかりと制度の理解を深めておきたいところです。
参考コンテンツ:
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